ステーキと妻の話

またステーキか昼間のと食べ比べてみてよ私の料理は世界一美味しいんでしょそう言って妻が悪戯っぽく笑う僕はしぶしぶ妻のステーキを口に運ぶ昼間のステーキよりも確かに美味い。
甘い嘘よかったでも2食連続ステーキはきついよ私に隠れてこっそり食べるからよ楽しそうに笑う妻の文のステーキには手はつけられていない。
君は食べないの私は後で食べたければ私のぶんも食べていいよいらないよ妻はじっとこっちを見つめている 落ち着かないな君も食べなよだから後で行ってばね君の作った卵焼きが食べたい。
だめお預けね意地悪言わないでよ舐めたいんだよナイフを持つ手に涙が溢れてしまい妻の姿がぼやけたあっと思った時には目に装着したコンタクトがずれて目の前の妻の姿が消えた目から外れた火葬資格用のコンタクトレンズが頬を伝って落ちたテーブルの向こうに見える棚の上で妻の遺影が笑いかけてくるその日によって色々な表情に見える妻の笑顔は今日は困って笑っているように見えた溢れてくる涙を腕で拭うと耳につけた仮装聴覚用のイヤホンからごめんねと妻の声が聞こえた。